九谷焼の置物を彩る凸盛(デコモリ)技法

凸盛(デコモリ)絵付技法とは

九谷焼の置物に見られる独特な絵付技法「盛(もり)」、そのデザインは個性的であり、一見してグロテスクな印象さえ受けるが、この凝縮した超濃密なデザインパターン、良く見ると荘厳かつ絢爛豪華な装いに見えてくる。この技法が多く用いられた明治期、海外への輸出用の作品に描かれたことで一気に広まったと言われている。

絵付は筆ではなく下写真①のように絞り袋により下写真②の盛絵具と言われるクリーム状の特殊な絵具で描かれる。例えるならケーキの生クリームでの装飾と同じ手法です。絞り方の絶妙な強弱により華やかに描き出される紋様は見事な存在感を創りだします。下写真③は絞り袋の先端に付けられる金属製の抽出口ですが使い続けると先端の穴が削れ広がる為、均一な美しい線を描く為に頻繁に交換を要する実に贅沢な技法でもあります。

写真①ケーキをデコレーションする絞り袋のような道具を使用します
②粘度の高い凸盛専用の絵具を使用します
写真③絞り袋先端に付ける金属製の注出口です

絵付でありながら2次元での表現ではなく3次元(立体)での美しさの表現は単に鮮やかな色彩のコントラストではなく、立体的な文様それぞれが創りだす陰影さえも作品の美しさとなるのが「盛(もり)技法」の最大の特徴であると言えます。

実際に盛絵付け作業をする風景です

粘度の高い絵具の為、水分量によって描く際の描き心地に違いが出るため工房内の温度や湿度管理も重要となります。また描く際には一筆書きのように一気に描ききる勢いで描く必要があるため繊細な線描きは熟練した技術を必要とする絵付方法となっています。近年ではこの技術を継承する職人不足が大きな課題となっておりますが、若手の職人、作家たちが自分の作品の新たな表現の一つとしてこの絵付技法を取り入れ始めてくれているのが今後の希望になっています。

凸盛技法で描かれた作品はこちらからご覧いただけます。
凸盛コレクション(九谷焼専門店 和座本舗サイト内)