九谷焼の使い勝手について個人的な感想
この仕事に就いて20数年になりますが当時からよく言われるフレーズがあります。「九谷焼の食器は絵が多すぎて料理には使いににくいでしょ」確かに料理を盛り付ける器としてはデザイン量が多すぎると自分でも思います。さらに言えば器自体の形状に厚みがあり言葉悪く言えばやぼったいカタチなのも使う場を選ぶ気がします。
この九谷焼の特徴でもありデメリットでもある絵付の多さと形状のやぼったさ、これにも歴史をたどるとちゃんとした理由があります。そもそも九谷焼が生まれた九谷村(今の加賀山中温泉の奥になる地域)で使われていた磁器土は鉄分が多く荒い粘土質なため焼成した際に薄いグレーやくすんだ青色の素地として焼き上がりました。さらに鉄分による小さな黒点も見られるため素地単体で言えば製品価値の低い焼き物だったと言われています。
その素地を用い献上品として使えるように工夫されたのが上絵技法により装飾された焼き物、それが九谷焼のルーツと言われています(諸説あります)そもそも強度の低い磁器土で成形するため器自体は厚みのある形状になります。その厚みのある形状に見合い献上品として使えるくらい見栄えのするデザインを描き出すことから生まれたのが九谷焼の特徴的な全面図柄ということになります。
そんな九谷焼のルーツを現代も継承しているがために器の形状は厚みがあり絵付量の当時のままオーバースペック気味な絵付けを施されています。実際のところ普段使いの器として頻繁に使う食器として考えた場合、「お値段以上●●●」などの大手生活用品店で取り扱いのある食器の方が断然使いやすいと思います。軽くて食器洗浄機対応で電子レンジも大丈夫な食器に機能的に勝てる要素はひとつもありません(笑)事実、私自身も大手生活用品店の食器を使っています。
実用性を考えると九谷焼は不便な食器かもしれません、それでも食卓にあるとその存在感は圧巻で食卓に彩りを与えてくれます。食事がルーティンワークではなくエンターテイメントやアクティビティのように感じることができるのはそんな食器が少しでも置かれた食卓のような気がします。
コロナ禍でお家ご飯の機会が増えことで九谷焼を自宅用の食器としてお求め頂く方々が増えた気がします。こんなご時世ですので食卓に九谷焼があることで少しでも気分転換や会話のきっかけになるような役割を果たせれば幸いです。
結論から言えば九谷焼の器は普段使いの器としては使いににくい・・・
けれど九谷焼には九谷焼にしかできない役割もあると私は思います。
ちなみに個人的には、ご飯茶碗、マグカップ、コーヒーカップ、大皿、盛鉢、取り皿(角皿)、小鉢、ビアグラスは九谷焼を愛用しています。あ、書き出すと結構使ってました(笑)