2011年6月に海外のコンペに応募した作品コンセプトをアーカイブとしてこちらで書き残しておきたいと思います。この時のコンペで与えられた作品テーマは「界」でした。デジタルデザインデータによる応募条件でした。
作品概念説明書(design proposal)
設計の理念
「界」という壮大でそして深い意味を持っているテーマを考えた時、自分達が今ここに存在する地球という「界」とそれを外から見ることができる宇宙という「界」との境界線を表現したいと考えました。
今回、日本は歴史的な大震災を経験しました。震災後、台湾をはじめ多くの国々から多大なるご支援を頂き現在、復興へと一歩づつですが前進しています。
普段は人種的な境界線や政治的な境界線、文化的な境界線など人間が各々に定めた「境界線」が人と人との間に介在し目に見える「界」を作っています。
しかし、今回の大震災であらためて気がついたのはお互いを敬うことができる人間だということです。本来、地球を宇宙から眺めた時、そこに国境という線はありません。それが本当の地球なのです。
今回の作品のコンセプトの根底に「雑種(ハイブリッド)」というキーワードがあります。九谷焼の最大の特徴は多種多様な絵柄(テクスチュア)です。その絵柄は個々に個性があり素晴らしい美しさとなります。しかし今回はその本来の九谷焼の美しさを越える手法として「雑種(ハイブリッド)」という道を選択しました。デザインとデザインの重ね合わせ、全く趣の違うデザイン同士を混在させる事によって生まれる新たな統一感と色彩美、それを小さな地球の中で
表現しました。
それは我々人間が理想とする「界」の縮図でもあります。
色々な人種が集まり、色々な言葉が交わされ、色々な思想が重なり、色々な文化が融合し、そして人々が心を通わすことができる。それが本来、地球という「界」に生まれた人間がすべき美しい進化だと考えているからです。
境界線の無い地球が本当に美しいという事を九谷焼で表現することにより今回の大震災でご支援頂いた世界中の方々に少しでも御礼のメッセージとして発信したいという想いも込めました。
作品の外観及びサイズ
外観は磁器製の球体と木製の台の組み合わせにより地球儀を形成しています。
和絵具・用絵具・金などの九谷焼で使用される絵具を用い彩色しています。