金の価格の乱高下と伝統工芸

歴史的な金の高騰による伝統工芸への影響

2026年、年初から異常なスピードで最高値の更新を続けた金の価格。機械製品での使用、戦争による安全資産の需要増、色々な要因が重なり金の価格は信じられない高値をつけた。投資目的の方々からは喚起の声すら聞こえてきた。そんな中で長年、金を材料として使ってきた伝統工芸にとっては大きな決断をする時期が来ていた。

部材としての金

古くから多くの伝統工芸において金は作品に雅な雰囲気を演出する部材として頻繁に使用されてきました。私たちの九谷焼においては半数近い作品が金を使用した作品と言っても過言ではありません。また国内で生産される金箔は、100%ここ石川県で生産されています。まさに金は私たちにとって身近な存在でした。

そんな金が2026年になり、想像をはるかに超える金額になりました。職人さんたちもある程度、余裕を持って絵付けに使用する金色の絵具や金箔を確保していたとはいえ限りがあります。6月に入りいよいよ高値となった金を使用することになり、作品価格の変更をやむを得ず行わなければならなくなりました。これは手仕事の伝統工芸にとっては大きな問題となります。手仕事の工賃は据え置きのままで部材の高騰分を販売価格に反映するため同じ作品でありながら、20%以上の値上がりとなってしまいます。さすがにアイテムによっては作品に見合わない価格になるものもあります。特に普段使いの食器類においては高額になり過ぎて普段使いレベルで収まらなくなります。

6月に入り一旦、金の価格は年明け頃の価格まで落ちてきてはいるものの、将来的には高値を更新していくことは、ほぼ間違いないと推測されます。そんな状況で私たち伝統工芸に携わる者も創意工夫が必要となってきました。

金に代わるもの

冷静に考えて、本当にデザインの中に金は必要なのか?金が無くても九谷焼のデザインは成立するのではないだろうか?そんな事を考えてみましたが、やはり九谷焼のデザインには、あの輝きが必要だと個人的には思います。職人さんたちも、その考えがは同じようで金に代わる絵具で金色に近い色合いを発色できる絵具を調合し始めました。九谷焼に使用されていた純金は、作品に金の価値を付加できるというわけではなく(陶磁器の絵付けに使用された金は金として抽出しづらいため)あくまでもデザイン価値を高める色の一つという考えであれば、純金を使用する必要性はなく金色が発色できればいいという答えになります。

いずれにしても苦難が続く伝統工芸

部材の価格高騰は金だけにとどまらず銀も鉱物を使用して作られる絵具も全て値上がりしております。また高度成長期あたりから長らく製造に使用されてきた大規模な生産設備も老朽化の時期が来ております。加えて人手不足や燃料費の高騰などなど挙げればきりがないほど問題は山積みです。それでも次の世代に継承していくにはどうしたらいいのか?私たちは考え続けなければなりません。これまでは伝統工芸の市場を広げる努力をしてきましたが、これからは限られたリソースの中で意匠や技術を守っていくことが大事になるような気がします。